「早く布団に入る」が逆効果になるとき
眠れない日が続くと、多くの人は「少しでも早く布団に入ろう」と考えます。
明日も仕事や学校がある。
朝から予定がある。
できるだけ長く寝ておきたい。
だから、いつもより早めに布団に入る。
これは、とても自然な考え方です。
けれども、不眠が続いているときには、この「早めに布団に入る」という行動が、かえって眠りにくさを強めてしまうことがあります。
もちろん、早く休むこと自体が悪いわけではありません。
疲れている時に身体を横にすることも、大切な休息です。
ただ「眠れないまま寝床で長い時間を過ごす」状態が続くと、寝床と眠りの関係が少しずつ変わってしまうことがあります。
この記事では、寝床で長く過ごすことと不眠の関係について、行動や睡眠の仕組みの視点から整理していきます。
寝床に入っている時間と、眠っている時間は同じではありません
睡眠に悩んでいる方の中には、布団に入っている時間は長いのに、実際に眠れている時間は短いという方がいます。
たとえば、22時に布団に入る。
でも、なかなか寝つけず、実際に眠るのは1時ごろ。
朝は6時に起きる。
この場合、布団の中にいる時間は8時間あります。
けれども、実際に眠っている時間は5時間ほどです。
本人としては「8時間も布団にいたのに、あまり眠れなかった」という感覚になります。
そして、その感覚が続くと、布団に入ること自体が少しずつつらくなっていきます。
「また今日も眠れないかもしれない」
「布団に入っても、どうせ眠れない」
「あと何時間眠れるだろう」
そう考えながら寝床に入るようになると、寝床は安心して眠る場所ではなく、眠れないことを確認する場所のようになってしまうことがあります。
寝床が「眠る場所」ではなく「考える場所」になる
本来、寝床は眠るための場所です。
けれども、眠れないまま長い時間を寝床で過ごしていると、寝床の中でいろいろなことが起こります。
今日会ったことを思い出す。
明日の予定を考える。
仕事や学校のことが気になる。
人間関係のことを振り返る。
時計を見て、残りの睡眠時間を計算する。
「早く寝ないと」と焦る。
こうした経験が繰り返されると、寝床に入ることと、考え事や焦りが結びつきやすくなります。
すると、眠気があったはずなのに、布団に入った途端に目が冴えることがあります。
寝室に向かう時間が近づくと、少し緊張してしまうこともあります。
これは、性格の問題ではありません。
「気にしすぎだから」と片づけられるものでもありません。
行動の視点からみると、寝床と覚醒が結びついてしまっている状態として考えることができます。
つまり、寝床で眠れない時間を長く過ごすほど、寝床が「眠れない場所」として身体に覚えられてしまうことがあるのです。

「眠るために早く入る」が、かえってプレッシャーになることがある
眠れない日が続くと、どうしても睡眠時間を確保したくなります。
だから、いつもより早く布団に入る。
早く電気を消す。
目を閉じて、眠れるのを待つ。
しかし、眠気が十分に高まっていない状態で布団に入ると、すぐには眠れないことがあります。
そのときに、
「早く寝なければ」
「また眠れない」
「このままだと明日困る」
と考え始めると、頭と身体は休む方向ではなく、緊張する方向に向かいやすくなります。
睡眠は、強く意識すればするほど遠ざかることがあります。
例えば「絶対にリラックスしなければ」と思うほどリラックスしにくくなることがあります。
それと同じように、「絶対に寝なければ」と思うほど、眠ることが課題のようになってしまうことがあります。
睡眠は、試験や仕事のように、努力すればその場で成果が出るものではありません。
だからこそ、眠ることを強く意識しすぎると、かえってプレッシャーになってしまうことがあるのです。
大切なのは「布団に長くいること」ではなく「眠れる条件を整えること」
不眠に悩むとき、目標は「とにかく長く布団にいること」ではありません。
大切なのは、寝床と眠りの関係を整えていくことです。
そのためには、まず自分の睡眠を少し客観的に見てみることが役に立ちます。
たとえば、次のような点です。
・何時ごろ布団に入っているか
・実際に眠りにつくまで、どれくらい時間がかかっているか
・夜中に目が覚めたあと、どれくらい寝床で少しているか
・朝は何時ごろ起きているか
・眠れない時間に、寝床で何をしているか
これらを整理してみると「睡眠時間が短い」ということだけでなく、「寝床で眠れずに過ごしている時間が長い」という状態が見えてくることがあります。
もちろん、毎日きっちりと記録しなければならないわけではありません。
ただ、何となくの感覚だけで考えていると、「全然眠れていない」という印象が強くなりすぎることがあります。
実際の生活を少し整理することで、どこから整えていけばよいかが見えやすくなります。

眠れないときに、無理に寝床で粘らなくてもよい
眠れないときに、ずっと寝床で頑張り続ける必要はありません。
「布団に入ったのだから、眠れるまで出てはいけない」と思っている方もいます。
けれども、寝床の中で焦りや考え事が強くなっている場合、そのまま粘ることで、寝床と緊張がさらに結びついてしまうことがあります。
大切なのは、「寝床は眠る場所」という結びつきを少しずつ取り戻していくことです。
たとえば、眠れないまま長い時間が経ち、焦りが強くなっている時には、いったん寝床から離れて、静かに過ごす方が合う場合があります。
ただし、このときにスマートフォンを見続けたり、仕事を始めたり、明るい光を浴びたりすると、さらに目が冴えてしまうことがあります。
寝床から離れる場合も、できるだけ静かで刺激の少ない過ごし方が良いです。
たとえば、薄暗い場所で落ち着いて座る。
静かな音楽を小さく流す。
軽い読書をする。
呼吸を整える。
眠気が戻ってきたら、もう一度寝床に戻る。
このように、寝床で「眠れないまま頑張る時間」を減らしていくことが、眠りやすい条件づくりにつながることがあります。
ただし、強い不眠が続いている場合や、日中の生活に大きな支障がある場合は、自己流で無理に進めず、専門家と相談しながら取り組むことをおすすめします。
早く布団に入ることが悪いわけではありません
ここで大切なのは、「早く布団に入ってはいけない」という話ではないことです。
体調が悪い日。
強い疲れがある日。
ゆっくり横になって休みたい日。
そういうときに、早めに休むことは自然なことです。
問題になりやすいのは、眠気がないのに「寝なければ」とおもって早く布団に入り、眠れないまま長く寝床で過ごし、それが毎日のように続いている場合です。
その状態が続くと、寝床が眠る場所ではなく、緊張や焦りを感じる場所になりやすくなります。
だからこそ、睡眠を整えるときには、
「何時に布団に入るか」
だけでなく
「布団の中でどのように過ごしているか」
も大切な視点になります。
睡眠は、生活全体の中で整えていくもの
睡眠は、夜だけで完結するものではありません。
朝起きる時間。
日中の活動量。
光を浴びるタイミング。
仕事や学校での緊張。
夕方以降の過ごし方。
寝る前の考えごと。
寝床での過ごし方。
こうした要素が積み重なって、夜の眠りに影響します。
そのため、眠れないときに「寝る直前だけ何とかしよう」としても、うまくいかないことがあります。
睡眠を整えるには、生活全体の中で、眠りやすさを妨げている条件を見つけていくことが大切です。
これは、決して大きな変化を一気に求めるという意味ではありません。
少しずつ整理し、できるところから調整していくことが大切です。
MindCompassで大切にしていること
MindCompassでは、睡眠の悩みに対して、認知行動療法や行動療法の考え方をもとに、生活や行動を一緒に整理していく支援を行っています。
「布団に入ってもなかなか眠れない」
「眠れない時間が長く、寝床に入るのが不安になっている」
「夜になると考え事が増えてしまう」
「朝起きられず、生活リズムが崩れている」
「薬だけではなく、生活の整え方も考えたい」
このような悩みがある方に対して、気合や根性で何とかするのではなく、今の状態を丁寧に見立てながら、取り組めることを一緒に考えていきます。
和歌山での対面相談に加え、オンラインで全国の方を対象にカウンセリングを行っています。
睡眠の悩みや不眠、寝つきの悪さ、中途覚醒、朝起きられないことなどでお困りの方は、一人で抱え込まずにご相談ください。
