9月24日、和歌山県中小企業家同友会、紀北支部・青年部の合同例会で報告をさせていただきました。
今回いただいたテーマは、
「未来を生き抜く経営者に~ストレスチェック義務化と心の在り方」
です。
約50分の報告の中で、わたしがなぜ心理の仕事をするようになったのか、特別支援学校で働いていた頃のこと、起業してから経験したこと、そして現在取り組んでいるストレスチェックや職場のメンタルヘルスについてお話ししました。
ただ、今回の報告を通して伝えたかったのは、単に「2028年からストレスチェックが義務になります」という制度の話だけではありません。
大きなテーマにしたのは、
「未来を考えるためには、まず今の状態を知る必要があるのではないか」
ということでした。
わたし自身も「経営」を学んでいる途中です
わたしは臨床心理士・公認心理師として心理学を学び、特別支援学校で15年間働いてきました。
その後、2024年にMindCompassを立ち上げました。
心理については専門的に学んできましたが、会社を立ち上げれば、当然それだけで経営できません。
起業した当初は、営業も集客もなかなかうまくいかず、
「何をしたらいいんだろう」
と迷うことも多くありました。
そんな中、ある経営者の方から、
「専門家かもしれないけど、経営者じゃないよね」
と言われたことがあります。
当時のわたしには、かなり考えさせられる言葉でした。
では、「経営者」とは何なのか。
その答えを探す中で同友会に参加し、さまざまな経営者の方と出会い、経営指針やビジョンについて学ぶ機会をいただきました。
そこで少しずつ感じるようになったのが、
目の前の仕事だけではなく、その先にどんな会社をつくりたいのかを考えることの大切さ
でした。
わたし自身も、まだまだ経営者として学んでいる途中です。
未来を描くためには「現在地」が必要になる
会社について、
「3年後にはこんな会社にしたい」
「従業員がもっと楽しく働ける会社にしたい」
「若い人が長く働いてくれる会社にしたい」
と、未来を考えることがあります。
経営指針やビジョンは、その未来を考えるための大切なものだと思います。
一方で、未来だけを描いても、今どこにいるのかが分からなければ、そこまでの道筋は作れません。
売上なら、現在の売上を見る。
利益なら、現在の数字を見る。
顧客について考えるなら、今どんなお客様がいるのかを見る。
では、
「今、この会社で働いている人たちはどんな状態なのか」
については、どうでしょうか。
仕事の負担をどう感じているのか。
上司や同僚から必要な支援を得られているのか。
仕事の役割は分かりやすいのか。
今の職場にはどんな強みがあり、どこに改善できる余地があるのか。
そうした職場の「現在地」を知る方法の一つが、ストレスチェックや集団分析です。
ストレスチェックは「会社をよりよくするための道具」
ストレスチェックというと、
「ストレスが高い人を見つける検査」
というイメージを持たれることがあります。
しかし、本来の目的はそれだけではありません。
ストレスチェックは、メンタルヘルス不調を未然に防ぐための制度です。
そして、個人が自分自身の状態を知るだけでなく、個人が特定されない形で結果を集団分析することで、会社全体の状態を考える材料にもなります。
今回の報告では、
個人の状態を知る
→ 会社全体の状態を知る
→ 職場を改善する
という流れをお話ししました。
MindCompassでは、ストレスチェックを、
会社をよりよくするための道具
として使ってほしいと考えています。
「全国平均より良かった」で終わらせない
例えば、ストレスチェックの集団分析で、会社全体の健康リスクが全国平均より良好だったとします。
それを見れば、
「うちは大丈夫だった」
と思うかもしれません。
もちろん、良い状態であることは大切です。
しかし、全体の数値だけを見ると見えないこともあります。
今回の報告で紹介した例では、全体の健康リスクは全国標準より良好でした。
一方で、さらに詳しく見ていくと、
- 役割の曖昧さ
- 判断に伴う負担
- 評価や支援のばらつき
など、もう少し確認した方がよい部分が見えてきました。
ここで大切なのは、
数字を見て、すぐに「これが原因だ」と決めないこと
です。
集団分析から、
「もしかすると、こういうことが起きているのではないか」
という仮説を立てる。
そして実際に経営者や管理職、必要であれば現場で働いている方に確認する。
そのうえで、
「では何を変えてみようか」
と考えていきます。
ストレスチェックの数字そのものが答えなのではなく、職場について考え始めるための材料として使うことが重要だと考えています。
2028年に義務になる。それなら2028年からでいい?
2025年の労働安全衛生法改正により、これまで努力義務だった労働者数50人未満の事業場についても、2028年4月1日からストレスチェックが義務化されます。厚生労働省
では、
「2028年に義務になるのであれば、そのときから始めればいい」
のでしょうか。
法律への対応だけを考えれば、それでもよいかもしれません。
しかし、職場改善という視点で考えると少し違ってきます。
2028年に初めてストレスチェックをすれば、
「2028年の今、会社がどんな状態なのか」
は分かります。
一方、2026年から実施していれば、
「2026年から2028年にかけて、会社がどう変わったのか」
を見ることができます。
改善策を実施する。
しばらく取り組んでみる。
もう一度測る。
良くなっていれば続ける。
変わっていなければ方法を見直す。
このような、
測定 → 改善 → 再測定
のサイクルを作ることができます。
今回の報告でも、2028年から義務対応として始めるのではなく、職場改善のためなら「今年から」始めてもよいのではないかという話をしました。
「人を生かす経営」とメンタルヘルスケア
同友会では、「人を生かす経営」という言葉を何度も耳にします。
今回の報告では、この考え方とメンタルヘルスケアについても考えました。
従業員一人ひとりに、
「もっと頑張ってください」
「ストレスに強くなってください」
と求めるだけでは、働きやすい職場にはなりません。
もちろん、一人ひとりがセルフケアを身につけることも大切です。
しかし同時に、
- 仕事の進め方
- 役割分担
- 相談のしやすさ
- 上司や同僚からの支援
- 評価の仕組み
など、働く環境そのものを整えることも必要です。
わたしはもともと、一人ひとりのカウンセリングをする心理職として学んできました。
しかし、働いている人が職場環境によって苦しくなっているのであれば、その人だけにアプローチするのではなく、働く環境にもアプローチしたいと考えるようになりました。
それが、現在MindCompassでストレスチェックや集団分析、職場改善に取り組んでいる理由の一つです。
「未来を生き抜く経営者に」は、自分自身にも向けた言葉
今回、
「未来を生き抜く経営者に」
というタイトルで報告させていただきました。
ただ、この言葉は参加してくださった経営者の皆さんだけに向けたものではありません。
わたし自身も同じです。
これから会社をどうしていきたいのか。
そのために、今どこにいるのか。
何を変える必要があるのか。
実際にやってみて、どうだったのか。
そして、また次を考える。
会社経営でも職場改善でも、
未来を考える。
今の状態を知る。
できることから動く。
そして、もう一度確認する。
という流れは、よく似ているのかもしれません。
報告の最後には、
経営指針やビジョンを考えること。
ストレスチェックや集団分析で現在地を知ること。
そして、組織や従業員のために職場環境を改善していくこと。
を一つの流れとしてお話ししました。
MindCompass自身も、まだまだこれからの会社です。
わたし自身も、未来を考えながら、今できることを一つずつ積み重ねていきたいと思います。
そして企業の皆さんにも、ストレスチェックを単なる「義務への対応」で終わらせるのではなく、
自分たちの会社の現在地を知り、これからどんな職場にしていきたいのかを考える機会
として活用していただければと思っています。
MindCompassでは、和歌山市を拠点に、和歌山県内から大阪南部を中心として、ストレスチェックの実施・集団分析から、その後の職場環境改善まで支援しています。
働いている方がそれぞれの力を発揮できる職場を、企業の皆さんと一緒に考えていきます。