ストレスチェックを導入するとき、
「従業員には、どう説明すればいいのでしょうか?」
という相談をいただくことがあります。
会社側からすると、
「ストレスチェックを実施しますので、回答してください」
と案内すれば十分に思えるかもしれません。
しかし、従業員の立場では、
「結果を会社に見られるのでは?」
「ストレスが高いと、仕事に影響するのでは?」
「何のために答えるの?」
といった疑問や不安を感じることがあります。
ストレスチェックは、ただ回答してもらえばよいものではありません。
安心して、自分の状態について正直に回答できること。
そのための環境を会社側がつくることも、ストレスチェックを実施するうえで大切だと考えています。
今回は、ストレスチェックを始める前に、従業員の皆さんへ伝えておきたいことを考えます。
まず「何のためにするのか」を伝える
ストレスチェックについて、
「法律で決まっているので実施します」
とだけ説明すると、従業員から見れば、
「会社の手続きのために回答するもの」
になってしまいます。
もちろん、ストレスチェックは労働安全衛生法に基づく制度です。
しかし、本来の目的は、書類上の義務を果たすことではありません。
ストレスチェックは、働いている方が自分のストレス状態に気づき、メンタルヘルス不調を未然に防ぐための「一次予防」を目的とした制度です。
また、個人が特定されない形で集団分析を行うことで、会社として職場環境を考える材料にもできます。
そのため、従業員への説明では、
「法律で必要だから」
だけでなく、
「皆さん自身に、今の自分の状態を知ってもらうために実施します」
という目的まで伝えてほしいと思います。
「会社に結果を見られるのでは?」という不安に答える
ここは、特に重要です。
前回の記事でも紹介しましたが、ストレスチェックの個人結果を、会社が自由に見ることはできません。
結果は本人に直接通知され、事業者へ個人結果を提供する場合には、原則として本人の同意が必要です。
例えば、
「最近とても疲れている」
「仕事のことで不安を感じる」
「上司から十分な支援を受けられていない」
と回答したからといって、その回答内容がそのまま社長や上司へ伝わる仕組みではありません。
これは単なる個人情報保護の問題だけではないと思います。
もし、
「正直に答えたら会社に知られる」
と思っていたら、本当の状態について答えることは難しくなります。
それでは、ストレスチェックを実施しても、職場の状態を正しく把握できません。
だからこそ、
「誰が個人結果を見るのか」
「会社にはどの情報が伝わるのか」
を、実施前に具体的に説明する必要があります。
「受けないと怒られる?」という疑問についても伝える
意外と知られていませんが、ストレスチェックは、会社側には実施義務があっても、労働者本人には受検義務がありません。
厚生労働省も、労働者に受検義務はないと明示しています。
会社は未受検者へ受検を勧めることはできます。
一方で、
「受けなかったから評価を下げる」
「受けないなら処分する」
といった不利益な取扱いをすることは禁止されています。
だからといって、
「受けても受けなくても、どちらでもいいです」
とだけ伝えればよいわけでもありません。
ストレスチェックの目的を説明したうえで、
自分自身の状態を振り返る機会として、できれば受けてほしい
と伝える。
強制ではなく、制度の意味を理解してもらったうえで参加を促すことが大切です。
高ストレスと判定されたら、会社に知られる?
もう一つ不安になりやすいのが、
「高ストレスと判定されたらどうなるのか」
です。
高ストレスと判定されたからといって、その情報が自動的に会社へ通知されるわけではありません。
一定の要件を満たす方は、本人が希望する場合、医師による面接指導を申し出ることができます。
この制度も、
「高ストレスの人を会社が見つける」
ことが目的ではありません。
必要な人が、必要な支援につながるための仕組みです。
そのため、実施前には、
「高ストレスだったらどうなるのか」
「誰に相談できるのか」
「医師による面接指導を希望するときにはどうすればよいのか」
まで説明しておくと、従業員にとって制度がより分かりやすくなります。
「誰が受けていないか」は会社に分かることがあります
ここは、個人結果との違いを分けて説明しておく必要があります。
会社は個人の回答内容や結果を自由に見ることはできません。
一方、誰がストレスチェックを受けたか、受けていないかという受検の有無については、会社側が把握することができます。
これは、未受検の方へ受検を案内するためです。厚生労働省も、受検の有無の情報については事業者への提供が可能としています。
ここを曖昧にして、
「会社には何も分かりません」
と説明するのも適切ではありません。
回答内容や個人結果は守られる。
ただし、受検したかどうかは確認されることがある。
この違いを正確に伝えることが、かえって安心につながると思います。
集団分析についても説明する
会社がストレスチェックを職場改善に活用する場合には、集団分析についても説明しておきたいところです。
集団分析では、
「○○さんがどうだった」
を見るのではありません。
個人が特定されない形で、
「この職場では仕事の負担をどう感じている人が多いか」
「上司や同僚からの支援はどうか」
「心身のストレス反応はどうか」
といった職場全体の傾向を見ます。
そして、その数字を材料に、
「なぜこの結果になっているのだろう」
と考えます。
MindCompassでは、
数字 → 仮説 → 確認 → 改善
という流れを大切にしています。
例えば「上司の支援が低い」という結果だけで、
「管理職に問題がある」
とは判断しません。
上司自身の業務量が多いのかもしれません。
相談する機会が少ないのかもしれません。
必要としている支援と、実際に行われている支援にずれがあるのかもしれません。
ストレスチェックは、誰かを悪者にするためのものではありません。
今の職場を知り、働きやすくする方法を考えるための材料
として使うものだと考えています。
「回答してください」の前に伝えてほしいこと
ストレスチェックを実施するときには、
回答方法や回答期限の説明も必要です。
しかし、それより先に、
なぜ実施するのか。
個人結果は誰が見るのか。
会社には何が分かるのか。
高ストレスだった場合はどうなるのか。
結果を会社として何に使うのか。
を伝えてみてください。
厚生労働省が2026年に公表した小規模事業場向けの実施マニュアルでも、ストレスチェックの導入にあたって、事業者が方針を示し、実施方法について労働者の意見を聴き、社内ルールを作って周知することが示されています。
これは、単なる事務手続きではありません。
会社が、
「この制度を何のために使うのか」
という姿勢を伝えることでもあると思います。
安心して答えられることから、ストレスチェックは始まる
2028年4月1日からは、労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務化されます。
これから初めて導入する会社も増えていくと思います。
そこで、
「Webフォームを用意した」
「実施者を決めた」
「従業員にURLを送った」
だけで準備を終わらせないでほしいと思っています。
ストレスチェックには、自分の心身の状態や職場について答える項目があります。
だからこそ、
安心して答えられる環境を先につくること
が大切です。
個人の情報は守られる。
正直に回答したことで不利益を受けない。
困っているときには相談できる。
そして、会社も結果を職場改善に活用しようとしている。
そこまで理解してもらったうえで実施することで、ストレスチェックは単なる毎年の手続きではなくなります。
MindCompassでは、ストレスチェックそのものの実施だけでなく、導入前の体制づくりや従業員への説明、集団分析、結果説明、その後の職場改善まで支援しています。
和歌山市を拠点に、和歌山県内や大阪南部を中心として企業のメンタルヘルス支援を行っています。
ストレスチェックを、
「受けてもらうもの」ではなく、安心して自分や職場について考えられる機会にする。
そのための準備から、一緒に考えていきたいと思っています。