ストレスチェックを実施したあと、会社として気になるのが「結果をどう活かすか」ではないでしょうか。
一人ひとりのストレスチェック結果は、原則として本人に返却されるものです。
一方で、
「うちの職場は、どんなところに負担がかかっているのだろう」
「働きやすさという点で、何か改善できることはないだろうか」
と会社全体の状態を考えるために使われるのが、集団分析です。
2026年6月30日、この集団分析に関する労働安全衛生規則が改正されました。
2027年4月1日から、集団分析は「特定の個人を識別することができない方法で行う」ことが、規則上明確になります。
ただ、今回の改正を
「これまでできていた分析ができなくなる」
「10人未満の会社では集団分析ができない」
と考える必要はありません。
大切なのは、個人のプライバシーを守りながら、職場をより良くするために結果をどう活用するかです。
今回は、今回の改正内容とともに、小規模な職場で集団分析を活用するときに大切にしたい考え方を整理します。
そもそも「集団分析」は何のためにするのか
ストレスチェックというと、一人ひとりのストレス状態を確認するもの、というイメージが強いかもしれません。
もちろん、それも大切な役割の一つです。
従業員自身が自分の状態に気づき、必要であれば休息を取ったり、相談につながったりすることは、ストレスチェックの重要な目的です。
一方で、職場で働く人たちの結果を、個人が特定されない形でまとめて見ると、また違ったことが見えてきます。
例えば、
・仕事の負担感が全体的に高くなっていないか
・上司や同僚からの支援を得られているか
・職場によって傾向に違いがないか
・昨年と比べて状態が変化していないか
といったことです。
これが集団分析です。
ここで大切なのは、「誰がストレスを抱えているのか」を探すための分析ではないということです。
見るのは「個人」ではなく「職場」です。
わたしたちは、集団分析を会社の健康診断のようなものとして捉えると分かりやすいと考えています。
数値を見て良い・悪いと評価することが目的ではありません。
今の職場がどのような状態なのかを知り、
「ここは維持していきたい」
「ここについては、少し詳しく見てみよう」
と考えるための材料にします。
2027年4月から何が変わる?
今回の改正では、集団分析について
「特定の個人を識別することができない方法で」
集計・分析を行うことが、労働安全衛生規則上明確になります。
施工日は2027年4月1日です。
ただし、2027年4月から突然、集団分析の考え方が大きく変わるわけではありません。これまでも、集団分析は、個人が特定されないことを前提として実施されてきました。
今回の改正は、その考え方をより明確に規則へ位置づけたものです。
つまり、
「集団分析は、従業員が安心してストレスチェックを受けられる仕組みの中で行う」
ということが、よりはっきり示されたと考えるとよいでしょう。
集団分析そのものが義務になるわけではありません
もう一つ、混同しやすい点があります。
今回の改正によって、集団分析自体が義務になるわけではありません。
ストレスチェック実施後の集団分析については、これまでと同じく努力義務です。
一方、2028年4月1日からは、これまで努力義務だった50人未満の事業場にもストレスチェックの実施義務が広がります。
そのため今後
「ストレスチェックを初めて実施する」
という小規模企業も増えていくと考えられます。
そこで一緒に考えておきたいのが
「実施したあと、その結果をどう活かすのか」
という部分です。
義務だからストレスチェックを実施する。
それだけでも制度への対応になります。
ただ、せっかく従業員の皆さんに協力してもらうのであれば、その結果を職場づくりにも活かしてほしいとMindCompassでは考えています。
「10人未満だと集団分析できない」は本当?
特に小規模な会社では、この点が気になると思います。
例えば従業員20人の会社でも
・営業部5人
・事務部4人
・製造部8人
・管理職3人
というように部署を分ければ、一つひとつの集団はかなり小さくなります。
人数が少なくなるほど、
「この回答をしたのは、あの人ではないか」
と推測できる可能性が高くなります。
そのため厚生労働省では、10人を下回る集団については、原則として分析を行うわないという考え方を示しています。
例えば、厚生労働省は、57項目すべての合計点の平均値を利用する方法や、「仕事のストレス判定図」を用いる方法などを示しています。
つまり、人数だけを見るのではなく
「この結果から、特定の従業員が推測されないか」
という視点で考える必要があります。
小規模な会社ほど「細かく分ければよい」とは限りません
集団分析について相談を受けていると、
「せっかくなら部署別に細かく分析したい」
という話になることがあります。
確かに、部署別にみることで職場ごとの特徴が分かりやすくなる場合があります。
ただ、小規模な会社では、分析を細かくしすぎることで、かえって使いにくい結果になることがあります。
例えば、4人の部署について詳細な尺度ごとの結果を出したとしても、
「この項目が低いのは、あの人ではないか」
と考えられる状態では、従業員も安心してストレスチェックに回答できません。
また、分析を細かくすればするほど、必ず職場のことがよくわかるわけでもありません。
場合によっては
20人を20人の職場として見る
方が、その会社のじょうたいを適切に把握できることもあります。
会社の人数や組織構成を見ながら
「どの単位で分析することが、職場改善に一番役立つのか」
を考えることが重要です。
集団分析の数字だけで「職場の問題」を決めない
ここは、MindCompassが集団分析を行う上で特に大切にしているところです。
例えば分析結果で、
「仕事の量的負担が高い」
という結果が出たとします。
その結果をみて
「この結果は仕事量が多すぎる」
と判断するのは早いかもしれません。
実際の職場では
・一時的に繁忙期だった
・特定の人に仕事が集中している
・人数ではなく仕事の進め方に負担がある
・仕事量よりも急な変更が多い
・役割分担が分かりにくい
など、さまざまな背景が考えられます。
同じように
「上司からの支援が低い」
という結果が出たとしても
「管理職に問題がある」
とすぐに結論づけることはできません。
管理職自身が多忙で声をかける時間がないのかもしれません。
相談する機会そのものが用意されていないのかもしれません。
あるいは、上司と部下で「支援している」「支援されている」という認識に違いがあるのかもしれません。
だからこそ、集団分析は答えではなく、確認する場所を教えてくれるものだと考えています。
数字を見たあとに、職場を見る
わたしたちが集団分析をするときには
「この数値が低いから、この対策をしましょう」
という進め方はできるだけしません。
まず結果から
「この職場では、こういうことが起きている可能性がある」
という仮説を立てます。
そして
「実際にはどうでしょうか」
と、経営者や管理職、必要に応じて現場の方々と確認していきます。
例えば
「仕事の負担が高い」
という結果であれば
単純に仕事を減らせばよいとは限りません。
業務量なのか。
人員配置なのか。
仕事の進め方なのか。
役割分担なのか。
繁忙期への備えなのか。
実際の職場を見ながら考えていくことで、初めて具体的な改善策につながります。
数字を見る。
仮説を立てる。
職場に確認する。
できることを考える。
この流れが、集団分析を職場改善につなげるうえで重要です。
「悪いところ」を探すための分析ではありません
集団分析を見ると、どうしても全国平均より悪い項目や、点数の低い項目に目が向きます。
もちろん、改善できるところを見つけることは大切です。
一方で、
「この会社では何がうまく行っているのか」
を見ることも同じくらい重要です。
例えば
・同僚からの支援が高い
・仕事のコントロール感が高い
・働きがいが高い
・昨年より改善している項目がある
のであれば、それはその会社が持っている強みです。
職場改善というと、新しい制度をつくったり、大きく何かを変えたりするイメージがあるかもしれません。
しかし、
今できていることを確認して、それを続ける
ことも立派な職場改善です。
課題だけでなく強みにも目を向けながら、
「この会社らしい働きやすさとは何だろう」
と考える材料として集団分析を使ってほしいと思います。
小規模企業だからこそ、集団分析を活かせることもあります
人数が少ない会社では
「うちくらいの人数で分析して意味があるの?」
と思われることがあります。
確かに、人数が少ないからこそプライバシーには慎重になる必要があります。
一方で、小規模企業には小規模企業ならではの特徴があります。
職場の顔が見えやすく、経営者と従業員との距離が近い会社では
「結果を見て終わり」
ではなく
「最近、このあたりはどう?」
「ここはやりにくくない?」
と、実際の職場について話をするところまでつなげやすい場合があります。
大規模な組織と同じような細かな統計分析をすることだけが、集団分析の活用ではありません。
その会社の規模に会った方法で、職場について考えるきっかけを作ること。
小規模企業では、その考え方が特に大切だと思います。
ストレスチェックを、職場を考える年1回の機会を
2028年4月から50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます。
これから導入する企業にとっては
「どうやって実施するか」
が最初の課題になると思います。
ただ、ストレスチェックは、実施すること自体が最終目的ではありません。
一人ひとりには、自分自身の状態を振り返る機会として。
会社には、今の職場について考える機会として。
その両方に活用することができます。
そして集団分析は
「この会社には問題があります」
と判定するためのものではなく
「今の職場をもう少し働きやすくするとしたら、どこから考えてみようか」
という話を始めるための材料です。
MindCompassでは、ストレスチェックの実施だけでなく、集団分析結果の整理・説明、その結果から考えられる職場の状況の確認、実際の職場に合わせた改善方法の検討まで支援しています。
ストレスチェックを一度実施して終わらせるのではなく、
毎年少しずつ、自分たちの職場を良くしていく。
そのための一つの道具として、集団分析を活用してもらえればと思います。